小学校で特別支援学級への入級を迷っている保護者の方を、私はたくさん見てきました。しかし、みなさんが順調な過程を経て、入級にたどり着いたわけではありません。今回は、入級を視野に入れている人、保育園・幼稚園などから勧められた人などの手がかりとなるよう、小学校教諭時代の実話を紹介します。
圧倒的にすすめたい入級
もし、迷っておられるのなら私は声を大にしてこう言います。「絶対に入級した方がいい。」
そして、その迷いは誰のためのものなのかを考えてみてください。私はこれまで、何人もの保護者が入級を断る姿を見てきました。「自分も小さいときこんな感じだった」「家庭の考え方で育てたい」私たちに言わせると、それは大人のエゴです。
我が子を本当に愛するなら、自分たちを超えて大きく育ってほしいはずです。そのために今必要な支援なら、なりふりかまわず受けるべきです。「入級する」と「入級しない」では、小学校6年間の間の成長度合いは違うといえます。
入級したらこんなに満たされる!元教諭が伝えたい入級のメリット
我が子のことだけを考えてくれる「専属の先生」が手に入る
通常学級の担任も、あなたの子のことをしっかりと見てくれるでしょう。しかし、担任にとってはどの子もクラスの中の1人。誰かだけににたっぷり時間を割いたり、特別な措置をとることは難しいものです。
もし子どもが教室で何かに不安を抱えたとき、大きな声を出したり、泣き出したりしても、学級担任ができることには限りがあります。しかし、あなたの子どもが特別支援学級に所属している場合、他の手立てをとることができます。例えば「先生にゆっくり話を聞いてもらう」「一緒に課題に取り組んでもらう」「別室で対応してもらう」などが考えられます。どれも学級担任1人ではできないことばかりです。
友だちとの関係、学習、給食、当番活動など、小学校には様々な場面があります。専属の先生がいることですぐに対応がとれることはもちろん、いつでも対応してもらえる安心感で、日頃から穏やかに行動することができるかもしれません。
本人がしっかり成長できたら、退級すればよい
一度特別支援学級に入級したからといって、ずっと在籍し続けるわけではありません。必要な支援を受け、年齢と共に成長したとき、「もう支援学級の手を借りなくても大丈夫」と判断されることがあります。タイミングとしては、小学校での進級時や、中学校への進学時など様々です。
特別支援学級では、学習面だけでなく、集団活動や人間関係、社会的マナーの習得など、一人一人に応じた指導を行います。例えば「自立活動」や「SST(ソーシャルスキルトレーニング)」といった学習では、通常学級では得がたい経験や学びを得ることができます。
少人数の落ち着いた環境の中で、個々を大切にしながら、将来社会で生きていく力を育む──それが特別支援学級の魅力です。こうした学びの機会は決して当たり前にあるものではありません。大切な成長の時期を逃さず、お子さんの人生にとって実りある時間になるよう、大事にしてほしいと願っています。
小学校の成績なんて、アテにしなくてよい。それよりも身に付けたいことはありませんか?
「取り出し(個別支援)をすると、授業についていけなくなる」と心配され、入級をためらう方もいらっしゃいます。
でも、安心してください。実際に大きな学習の遅れが生じることはほとんどありません。仮に少し遅れたとしても、家庭でのサポートや習い事などで十分にフォローすることが可能です。
それよりも、「自立活動」や「SST(ソーシャルスキルトレーニング)」といった特別支援学級ならではの学びは、他の場面ではなかなか得られない貴重な経験です。長い人生を見据えたとき、今本当にお子さんに必要な学びとは何か、どこにこそ支援が必要なのか、一度立ち止まって考えてみてほしいのです。
また、小学校の通知表の評価は、現在では「絶対評価」が基本となっており、あくまで個々の努力や成長の過程を見て判断されます。進学への影響を過度に心配する必要はありません。
もし高校進学を視野に入れているご家庭であれば、「中学校での退級を目指して、小学校でしっかりと土台をつくる」という考え方もあります。今この時期にしかできない支援を受けながら、お子さんの未来に向けた準備を進めていきましょう。
支援の質は、先生と地域で大きく変わる
とはいえ、特別支援に関わる全ての先生が、必ずしも特別支援教育に精通しているわけではありません。特別支援学級の担任は決して“軽い仕事”ではありませんが、実際には、学級担任に自信のない先生や、子育て中で通常学級の担任が難しい先生が配属されることも少なくありません。
ただし、各学校には「特別支援コーディネーター」と呼ばれる、特別支援に関する調整や支援を行う主任的な立場の先生がいます。この役職の先生は、特別支援教育を専門としていることが多く、経験や知識も豊富です。まずは、そのコーディネーターの先生に相談してみると、安心できる情報が得られるかもしれません。
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